松井須磨子の名前を聞くと、誰しもがその波乱に満ちた人生を思い浮かべるのではないでしょうか。
大正時代に生きた女優であり歌手として、多くの人々に感動を与えた存在です。
しかし、その生涯には非常に悲しい結末が待っていました。
この記事では、松井須磨子の遺書と最期、そしてその経歴について詳しく紹介していきます。
松井須磨子の経歴
日本で1番最初に美容整形をしたのは松井須磨子(明治時代の女優)さんです。
当時の鼻を高くする施術はパラフィン(蝋)を鼻柱に注射するもので、横に流れたりして後遺症が残り、須磨子さんは大変苦しんだそうです。 pic.twitter.com/aPylLDTNbL— 森永タミー (@tammy_morinaga) April 29, 2023
松井須磨子の生涯は、まさに波乱万丈でした。
どんな時代にあっても、芸術の世界に生きる人々は多くの試練に直面するものですが、須磨子はその中でも特に壮絶な運命を歩みました。
その魅力的な演技力と歌唱力で人々を魅了した一方、私生活には数々の困難が立ちはだかりました。
では、まずその生涯を振り返りつつ、松井須磨子がどのような人物だったのかを見ていきましょう。
幼少期と上京
松井須磨子は、1886年に長野県松代町で生まれました。
家族は旧松代藩士の家系で、須磨子はその五人姉妹の末っ子でした。
幼少期は厳しい時代を生き抜き、6歳で父を失い、母と共に生活することとなりました。
家計が厳しく、生活は困難を極めていたようです。幼少期からの困難な環境は、須磨子に強い精神力を育むことになったのでしょう。
17歳で上京した須磨子は、菓子屋「風月堂」に住んでいた姉を頼りに、東京で新しい生活を始めました。
しかし、この上京の背景には、須磨子の女優としての夢があったことを忘れてはいけません。
松井須磨子は、平凡な日常から脱却したいという強い思いを抱えていたのです。
女優としての道を歩むため、そして自分自身を変えたいという情熱が、須磨子を動かしていたのです。
美容整形手術とその後遺症
須磨子が女優として成功するためには、顔立ちや外見の変化が必要だと感じたのでしょう。
女優としての夢を追う中で、須磨子は当時最新の技術だった美容整形手術を受ける決断をします。
具体的には、鼻筋に蝋を注入する隆鼻術を行い、外見に大きな変化をもたらしました。
この手術により、松井須磨子は日本初の整形美人女優として世間に認知されることとなりました。
しかし、この手術には後遺症がありました。
注入された蝋は非常に軟らかいため、顔の温度によって変形したり、ズレたりすることがあり、須磨子は何度もそれに悩まされることとなります。
顔全体が腫れたり、痛みで寝込むこともありました。
にもかかわらず、須磨子はその苦しみを乗り越え、女優としての道を歩み続けました。
その姿勢には、ただの女優ではない、強い意志を感じずにはいられません。
芸術座の結成と成功
須磨子のキャリアは、坪内逍遥が主催した文芸協会の演劇研究所での学びに始まります。
松井須磨子は、演技力を高めるため、演劇の基礎を学びながら成長していきました。
卒業後、文芸協会での公演で注目を集め、特に『人形の家』のノラ役で一躍スターダムにのし上がります。
しかし、その成功は一度の転機によって大きく変わります。
文芸協会で出会った島村抱月との関係が、須磨子の運命を大きく変えました。
二人の恋愛はスキャンダラスなものであり、その結果、文芸協会から追放されてしまいます。
しかし、須磨子はそれに屈せず、抱月と共に芸術座を結成しました。
この芸術座での活動が、須磨子の名を広め、さらに多くの観客にその演技力を届けることとなります。
芸術座での成功を通じて、須磨子はますます名声を得ていきました。
特に『復活』でのカチューシャ役は大ヒットし、須磨子は日本初の「歌う女優」としても知られるようになりました。
松井須磨子が歌った「カチューシャの唄」は、当時のレコード売上で大きな話題を呼び、松井須磨子の名前は広まりました。
抱月との死別とその後
須磨子の人生において、最も深い悲しみが訪れるのは1918年です。
この年、長年のパートナーであり、愛する人でもあった島村抱月がスペイン風邪により急死してしまいます。
抱月を失った須磨子は、心の支えを一気に失った形となり、その後を追う決心を固めていたとも言われています。
松井須磨子は、抱月の死後、遺書を残して命を絶つことを選びました。
その遺書には、「では急ぎますから」という一文が記されており、まるで愛する人の元に急ぐかのような気持ちが込められていました。
須磨子の最期は、島村抱月との深い絆を感じさせるものであり、その死を惜しむ声が今も多くの人々から寄せられています。
松井須磨子の遺書
須磨子の遺書は非常にシンプルでありながらも、心の底から湧き上がる感情が伝わってくる内容です。
遺書には、愛する人への深い思いと、島村抱月との再会を願う気持ちが込められていました。
特に「では急ぎますから」という一文は、普段の何気ない挨拶のようでありながら、その背後には切ない決意が隠されていると感じます。
この遺書は、須磨子の一途な愛情と、その愛が最終的にどれほど深いものであったのかを象徴していると言えるでしょう。
松井須磨子が抱月を失ってから心の中でどれほどの苦しみを感じていたのか、その苦悩を思うと胸が締め付けられます。
松井須磨子の最期の地
須磨子は1919年1月5日、東京の芸術倶楽部で命を絶ちました。
松井須磨子の最期は、まさにその一途な愛と、芸術に対する深い情熱が感じられるものでした。
遺体は、その後、須磨子の生まれ故郷である長野市松代町に埋葬されました。
死後、芸術座は松井須磨子の名を冠し、芸術活動を続けましたが、松井須磨子がその一生を捧げた舞台や歌は、今でも多くの人々に感動を与え続けています。
須磨子が残した足跡は、ただの一時的なものではなく、後世にわたって長く語り継がれるべきものです。
まとめ
「松井須磨子」。俳優養成学校に入学を希望するも鼻が低いことを理由に拒否され、鼻に蝋を注入する美容整形手術を受け女優となり、「日本初の整形美人女優」とも称されます。後遺症に悩み、二度の離婚をし、不倫関係にあった島村抱月が急死すると、自殺しました。書肆ゲンシシャにてご覧いただけます。 pic.twitter.com/TyptAQrisw
— 書肆ゲンシシャ/幻視者の集い (@Book_Genshisha) March 15, 2024
松井須磨子の生涯は、その情熱、愛、そして芸術への献身から成り立っています。
松井須磨子は一世を風靡した女優であり、歌手としても成功を収めましたが、その私生活には多くの困難が立ちはだかりました。
それでも須磨子は、そのすべてを乗り越えて芸術を追求し続けました。
遺書と最期には、愛と芸術に対する深い思いが込められており、今でも多くの人々に感動を与えています。
松井須磨子の名前は、今後も日本の演劇史と音楽史の中で語り継がれることでしょう。
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